モアレ(moire)…干渉縞を楽しむ
等間隔に並んだ平行線を透明なフィルムに印刷して、2枚重ねて、ちょっとずらす(片方を傾ける)と・・・あ~ら不思議!別の縞々模様が現れます。これがモアレ(moire)です。
ずらす傾きを変えると、モアレ(縞々模様)の幅も変わります。
等間隔に並んだ同心円を透明なフィルムに印刷して、2枚重ねて、ちょっとずらすと・・・こんなモアレが現れます。
ずらす幅を変えると、モアレ(縞々模様)がダイナミックに変化します。
パンチングボードを2枚重ねて、ちょっとずらす(片方を傾ける)と・・・6角形のモアレが現れます。
ずらす傾きを変えると、6角形のモアレの大きさが変わります。
モアレ、面白そうでしょ。でもね、静止画じゃモアレの本当の面白さを楽しめません。2枚のフィルムを自分でずらしてみて、ダイナミックに変化するモアレ模様を見ると・・・お~!すごい~!おもしろい~(^o^)
透明なフィルム(OHPフィルム)に平行線,同心円,パンチングボードを印刷して、モアレを楽しんでください。
■用意するもの
◆OHPフィルム:使用するプリンタがインクジェットプリンタなら「インクジェットプリンタ用 OHPフィルム」…A4 10枚で約\1,000でした。1枚、約\100です。ちょっと高い(^^;
私がOHPを最後に使ったのは何(十)年前でしょうか…今やPCとプロジェクターの時代ですからね~。OHPフィルムなんてまだ売ってるかな~?と心配しながら、ヨドバシカメラに行ったら、ありました(^_^) OHPはなくなっても、透明なフィルムに印刷したいという需要はあるでしょうから、心配しなくても大丈夫だったのかな?
OHPフィルムは1枚\100なので、3つのパターンを印刷すると\300になってしまいます。これでは、単価が高すぎるので、科学体験イベントで子供たちに持ち帰らせる場合は、A4に印刷したのを半分にカットして使いましょう。さらに半分、1/4にカットしても平行線とパンチングボートは全然問題ないな~。同心円はバームクーヘン1/4状態になってしまうので、ちょっと改善の余地ありです(^^;
◆ちょっと厚めのA4用紙:OHPフィルムが(紙に比べて)ちょっと高いので…2枚ともOHPフィルムに印刷する必要はないので(上に重ねる方だけ透明なフィルムであればよい)…片方は紙に印刷します。普通紙だと、ふにゃふにゃなので、ちょっと厚めの紙に印刷します。(普通紙でもかまいません。)
■OHPフィルムに印刷する
OHPフィルムに平行線,同心円,パンチングボードのパターンを印刷します。
下の画像をクリックすると、PDFが開きますので、それをOHPフィルムに印刷してください。
(同心円4つ版も用意しました。4つにカットすると4人分になります。)
このPDFをOHPフィルムに印刷するときは、プリンタのプロパティの設定が必要です。
※以下は、WindowsXPでCanonのプリンタでの例ですが、参考までに…
・PDFの[印刷]ツールボタンをクリックします。→[印刷]ダイアログボックスが開きます。
・[プロパティ]ボタンをクリックします。→[プロパティ]ダイアログボックスが開きます。
・[用紙の種類]には、[プロフォトペーパー]を選択します。
※使用するOHPフィルムの使用方法の説明に合わせてください。
・[印刷品質]には、[きれい]を選択します。
※これも使用するOHPフィルムの使用方法の説明に合わせてください。
・[OK]ボタンをクリックします。→[プロパティ]ダイアログボックスが閉じ、[印刷]ダイアログボックスに戻ります。
・PDFの[印刷]ダイアログボックスで[OK]ボタンをクリックします。→印刷が開始されます。
■紙に印刷する
上の各パターンは、1枚はOHPフィルムに、もう一枚は紙に印刷します。
プリンタのプロパティの設定は…
・ちょっと厚めの紙に印刷するなら、[用紙の種類]は[高品位専用紙]あたり、[印刷品質]は[きれい]を選択します。
・普通紙に印刷するなら、[用紙の種類]は[普通紙]、[印刷品質]は[きれい]を選択します。
※[印刷品質]を[標準]とか[早い]とかにすると、1mm間隔で並んでいる直線や円が等間隔で印刷されないことがあります。
■モアレを観察する
OHPフィルムと紙に印刷したら、それらを重ねてモアレを観察してみましょう。
フィルムを自分でずらしてみて、ダイナミックに変化するモアレ模様が・・・お~!すごい~!おもしろい~でしょ(^o^)
■干渉縞(かんしょうじま)
モアレとは、Wikipediaによりますと…『干渉縞(かんしょうじま)ともいい、規則正しい繰り返し模様を複数重ね合わせた時に、それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様のことである。』
平行線を傾けて重ねるとモアレが発生しましたが、傾けなくてもモアレ(干渉縞)が発生することがあります。
上記のWikipediaの説明にあるように「周期のずれにより」モアレ(干渉縞)が発生しますから、周期をずらす=平行線の間隔を変えればいいんです。
平行線のPDFを95%縮小して紙に印刷して、OHPフィルムを重ねたら↑こうなりました。この縞々が干渉縞です。縮小率を色々変えてみると、干渉縞の間隔も変わります。
その後、色々やっていたら、縮小印刷しなくても、このタイプの干渉縞を簡単に見られることが分かりました。OHPフィルムを紙から離して見ればいいんです。目からOHPフィルムまでの距離と、目から紙までの距離が違うので、遠くにある紙の平行線の間隔がOHPフィルムの平行線の間隔より狭く見えるので、干渉縞が発生するんです。
■TAMA300
規則正しい繰り返し模様ををちょっとずらすだけでモアレ(干渉縞)が発生します。つまり規則正しい繰り返し模様がずれているか/ずれていないか?は、モアレ(干渉縞)があるか/ないかで判断できます。これは、モアレ(干渉縞)の非常に重要な応用方法なんです。
モアレ(干渉縞)を使って、スケールの大きな(そして非常に精密な)観測をしているのが、TAMA300です。TAMA300とは、国立天文台三鷹キャンパス内の地下にある基線長300mの干渉計型重力波アンテナです。「なんだそれは?」と興味を持った方は、リンクをクリックして、ちょっと小難しい説明を読んでみてください(^^;
※私が住んでる府中から国立天文台三鷹キャンパスは、まぁ近いし、年に一回、国立天文台三鷹キャンパスの一般公開がありますので、その時、TAMA300の地下に潜って300mのトンネルの中にある干渉計型重力波アンテナの装置を見ることができます。ポイントは、これが干渉を使っているということ。一般公開を見に行くなら、何の予備知識もなく行くより、モアレ(干渉縞)のことを知っていて行く方が、一般公開を楽しめますよ(^_^)v
※重力波の検出にはと~っても高い観測精度が必要で、300mのトンネルを3Kmにすれば観測精度が1桁上がるゾ!ってんで、岐阜県飛騨市神岡町の地下に建設が進んでいるのが大型低温重力波望遠鏡が「かぐら(KAGRA)」です。
あ~!KAGRAのページのトップに「アインシュタインからの最後の宿題」って出てますよ。
ん~科学のロマンですね~(^o^)
重力波を観測できたらノーベル賞もんですよ~。みんなで応援しましょうね(^o^)/~
↑と、昔書いていたのですが、LIGOがノーベル賞とっちゃいましたね。
■二重スリットによる波の干渉
同心円のパターンを半分に切って、半円の中心を僅かにずらしてモアレ(干渉縞)を発生させると、これ「二重スリットによる波の干渉」の説明に使えますよ(^^)v
■液晶ディスプレイによるモアレ
同心円のPDFを開いて、PDFの[ズームアウト]ボタンを押して、表示を25%ぐらいまで縮小してみましょう。100%ではちゃんと同心円が表示されていたのに、25%ぐらいまで縮小すると、こんな模様になってしまいます。この模様もモアレです。
液晶ディスプレイが細かな「画素」の集まりでできているってことは知ってますか?液晶ディスプレイの表面を虫眼鏡で拡大して見ると、縦横に「規則正しく」画素が並んでいるのが分かります。 同心円を縮小していくと、線と線の間隔が、液晶ディスプレイの画素の間隔程度まで狭くなり、「規則正しい繰り返し模様の周期のずれ」で、モアレが発生するんです。
■パンチングボードによるモアレ
パンチングボードとはアルミ板や塩ビ板に規則的な並びで穴を開けた板です。パンチングボード2枚でモアレが発生します。先ほど引用したWikipediaのモアレのページの「図2」もパンチングボードによるモアレの例です。
このモアレを実際に見てみたい~!と思って、東急ハンズでパンチングボードを買ってきました。(20cm×30cm φ3mmの穴が5mm間隔で並んでいるアルミのパンチングボードが、2枚で約3千円。高い~(^^;) 2枚のパンチングボードを数cmの間隔を開けて並べて見ると… モアレが見えました~(^o^)
モアレが発生する理由は…目から手前のパンチングボードまでの距離と、奥にあるパンチングボードまでの距離が違うので、手前にあるパンチングボードの穴の間隔より、遠くにあるパンチングボードの穴の間隔の方が狭く見えるので、「規則正しい繰り返し模様の周期のずれ」で干渉縞が発生するんです。
さて、これをみんなに見せて、お持ち帰りさせたい。でも3千円は論外だ~
そうだ、平行線や同心円と同じように、パンチングボードのパターンもOHPフィルムに印刷すればいいじゃないか~(これなら百円以下です(^_^)
…で、作ったのが、パンチングボードのPDF。皆様、ご活用ください(^_^)v
多摩六都科学館でも、このパンチングボードによるモアレを見たことがあります。展示品ではなくて、展示室と展示室の間の通路の壁が二重のパンチングボードになっていて、モアレが見えたんです。(数年前の話ですけど…今もあるかな~?)
ありました。多摩六都科学館のモアレの壁です。ただの通路じゃなくて、ちゃんと展示品でした。(2012年6月)
■パターンを作るには…
「モアレ」で検索すると、ここで紹介した以外の色々なモアレが出てきます。それを自分で作るには…?
例えば、平行線のパターンをどうやって作ったと思います? 平行線は1mm間隔にしましたから(A4の用紙:210×297mmに)、200本の線が描かれています。
200本の平行線を描くには~ロットリング製図ペンと定規で~夜な夜な家族が寝静まってから精神統一して~無の境地で~平行線を延々と描き続けるんですが… 一本描き損じると、また最初から_| ̄|○ な~んてことは、してません(^^;;
「規則正しい繰り返し模様」を描くならパソコンでCAD(キャド)ソフトを使って描きます。
Wordで描くのは… 平行線なら描けるかも?ですが、同心円とパンチングボードのパターンは難しいだろな~
CADは、フリーソフトのJw_cadを使ってます。CADソフトを使うには、ある程度のスキルが必要ですが、Jw_cadは多数の使い方情報がネット上にありますから、自分で描いてみよう!と思われた方は、がんばってください(^_^)
ちなみに、正多面体ペーパークラフトの展開図や、万華鏡の仕組み(合わせ鏡)の図などは、Jw_cadを使って描いています。
※この記事の作成日は 2010/06/27
~.dion.ne.jp/~kagaku というサイトに載せていましたが、ホームページサービス(dion.ne.jp)が利用者減少のため2017/10/31で終了したので、ホームページのコンテンツをブログに移しました。
※NHK Eテレ サイエンスZERO 「“点と線”で世界をとらえる アイデア勝負 3次元認識」で、モアレじまの実験が出てきたのを見て…
あ~ モアレの記事を復活させなきゃ!と、復活(^^;
※関連記事
2012/06/09 多摩六都科学館の「モアレ」
2013/04/24 パンチングボードのモアレ
2012/05/06 「光子の逆説」日経サイエンス 2012年3月号
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