
フェライト磁石(その辺にある黒い色の磁石はフェライト磁石です)でモータを作るには、コイルを巻いて、整流子を作って…という風に作ります。(右の写真)そこそこ簡単に作れるので「簡単モーター」または、クリップを使って作るので「クリップモーター」。
ところが、ネオジム磁石を使うと(超強力な磁石なので)コイルを巻かなくても回ってしまいます。(左の写真)あまりにも簡単なので「超簡単モーター」です。
■用意するもの
◆ネオジム磁石:円筒形の小さなもの(φ5mm×5mmぐらいのもの)
この実験をやるには、まずネオジム磁石を手に入れなければなりません。東急ハンズにも売っていますが、1個数百円します。もっと安くネオジム磁石を入手できないの~?
できます。百円ショップ(ダイソー)のキャンディー型マグネットがネオジム磁石なんです(下の写真)。プラスチックの中にはめ込んである銀色のが(ニッケルメッキされた)ネオジム磁石です。釘と金槌を使って、ネオジム磁石をたたき出すと、1個約35円でとっても安い(^^)v

※最近のこのタイプのマグネットはネオジム磁石をたたき出すことができません。
磁石の量を減らすため、円柱状の1個の磁石が表裏貫通しているのでなく、表と裏にそれぞれ薄い円柱状の磁石が埋め込まれ、中間はプラスチックになってました。これで磁石の量は2/3に減ってます。これで製造原価が下がったかというと…「レアアース問題」でネオジムの価格が高騰しましたからね~(^^;
百円ショップでマグネットを探すと、かなりネオジム磁石を使った物があります。その中から、この実験に使えそうなネオジム磁石を探しましょう。(探すときの手がかりは、銀色の磁石で磁力が強いもの。ネオジム磁石が銀色(ニッケルメッキされている)のは酸化防止のためらしいです。
※2020/10/10追記:この記事を書いたのは2010年で、それから10年経って、ネオジム磁石は普通に100均で売ってます。
⇒「超強力マグネットミニ 100均」で画像検索
◆鉄釘:4cmくらいのもの
「ステン釘」というのを買ってきたら、磁石にくっかない~(汗;)ってことがありました。磁石にくっつくステンレスと磁石にくっつかないステンレスがあるようです。ですので、磁石にくっつく「鉄」の釘を。
◆リード線:17cmくらい。両端1cmくらいビニール被覆を剥がしておきます。
◆アルカリ乾電池(単3):マンガン乾電池だと電流が弱くて回りにくいことがありますので、アルカリ乾電池がお薦めです。
◆トラと檻(オリ)の絵:釘だけが回っていると「ホントに回っているの~?」と、回っているのがよく分からないので、何かを釘にくっつけておきます。何でもいい(釘に紐を縛り付けておいてもいい)のですが、科学イベントで超簡単モータをやるときは、表がトラで裏が檻(オリ)の絵を釘に貼り付けています。うまく回ると、トラの絵と檻(オリ)の絵が残像現象で重なって、トラが檻(オリ)に入ります。これで「ソーマトロープ」になります(^o^)v
トラと檻(オリ)の絵[PDF]
印刷する場合は、(普通紙ではなく)ちょっと厚めの紙に「両面・ふちなし印刷」で。
A4 一枚で66人分になりますので…必要でしたら、どうぞ。
※トラのイラストは「イラストポップ」の画像を利用させていただきました。
◆両面テープ(幅5mm, 2cmほど):釘にトラと檻(オリ)の絵を貼り付けるのに使います。
■実験の仕方

釘の頭(平たい方)にネオジム磁石をつけて、釘の先端を電池の底(-極)にぶら下げて、リード線を電池の+極に指で押しつけて、リード線のもう一方の端をネオジム磁石に接触させると・・・ほ~ら、回った(^o^)

トラが檻(オリ)に入ったように見えるか?というと…ん~(動いているものを静止画で撮るのって難しいです… え?動画を載せりゃいいだろうって! そうなんですけど… 実際に回っているのを見たかったら、是非自分でやってみよ~(^^; ※NHK教育TVの大科学実験でも「やってみなくちゃわからない!」って(細野晴臣さんのナレーションで)言ってますから(^^)v
※2020/10/10 やっと動画を作りました。↑は動画作るのが面倒なので、やらない言い訳💧 下記の「なぜ?」の中に動画を載せました。
注意:リード線を電池の+極に指で押しつけているところが熱くなることがあります。熱ッ!と思ったら(反射的に指を離しているとは思いますが)すぐに指を離してくださいね。やけどするようなことはありませんから。
「なぜ熱くなるのか?」…実験をしていて、こういう「発見」をしたら「なぜ?」って考える。それが「科学する心」なんですね~(って、回答になってないので(^^; 考えてみてくださいね~ ヒントのキーワードは「電気抵抗」と「ショート」)
■なぜ?
「なぜ熱くなるのか?」より、「なぜ回るのか?」ですよね~
モーターが回るのは「フレミングの左手の法則」で説明できます。「フレミングの左手の法則」とは?…自分で調べてね(高校生以上の人は「復習」してね。私も復習しましたから(^^;)。
で、超簡単モーターの場合、(フレミングの左手の法則が分かっている人には)電・磁・力の方向を図示すれば分かるのですが…イラストを作るのに手間かかるので、そのうち…←と書いて、ちっともやらないので…「フレミングの左手の法則」の画像検索結果をご覧の上、超簡単モーターで次の実験をしてみましょう。
・乾電池を上下逆にして(電流の向きが逆になると)回転の方向がどうなるか?
・磁石を上下逆にして(磁界の向きが逆になると)回転の方向がどうなるか?
超簡単モーターを「フレミングの左手の法則」で説明するとき、一番分かりにくいのが「電流の向き」です。
「磁界の向き」は…円柱状の磁石は丸い面がそれぞれN極S極に磁化されていますので、この実験では上下方向です。
左手を「フレミングの左手の法則」の形に構えて~人差し指(磁界の向き)を上にします。実験の結果、超簡単モーターはこっち向きに回ったから~
すると、電流の向きはこっち(横方向)になるよね~ 電池を縦方向にして電流をループさせているから、電流は上下方向かというと
そうではなくて、超簡単モーターを回転させている電流は、円柱のネオジム磁石の表面から中心の釘に向かって流れるわずかな横方向の成分によるものです。
■別のタイプの超簡単モーター

「超簡単モーター」で検索すると、ここで紹介した釘とリード線を使ったタイプではなく、銅線を曲げて、電池の下にネオジム磁石を付けたタイプの超簡単モーターの方がよく出てきます。
このタイプの超簡単モーターの作り方は…写真を見ただけで分かる人は分かるでしょうし、ネットで検索すれば作り方は色々出てますから、作ってみたいと思ったら、自分で調べてくださいな。
注意:このタイプの超簡単モーターも熱くなります!
釘とリード線タイプの超簡単モーターは、熱ッ!と指を離したら止まります。人間というセンサー(安全装置)付きです。ですが… 銅線タイプの超簡単モーターは、手を離して回り続けるので、安全装置がありません。30秒ぐらい回していると銅線が熱くなり、1分も回していると電池まで熱くなってしまいます。ですから、長時間回し続けないでください。
ネットに作り方の説明は多数出ているのですが、「熱くなるから注意!」というのを見たことがありません… 実際に実験してみる場合は、注意してくださいね。
※2008年 青少年のための科学の祭典 東京大会 in 小金井
で、空き缶を使った、このタイプの超簡単モーターを展示していたブースがありまして、モータの回転が早くなると、遠心力でネオジム磁石との接点が切れ、回転が遅くなると、またネオジム磁石と接点が繋がるという仕組みになっていて、へ~!これなら電流が流れすぎて熱くなることがありませんね~
なるほど~ と、写真を撮っておいたのですが、その写真が見つからない…

見つけました~ アルミ缶をリング状に切って、ポンチで一点凹みをつけ、画鋲の上に乗せてます。回転が速くなると、遠心力でリングの下の部分がネオジム磁石から離れるので電流が切れます。
■ネオジム磁石についての注意
ネオジム磁石は非常に強力な磁石なので、磁気カード(銀行カード,クレジットカード等),
パソコン,ゲーム機,携帯電話,ビデオテープ等の近くに置くと、情報が消えたり、電子機器の動作が異常になったりすることがあります。また、小さいネオジム磁石を誤って飲み込んでしまった場合、医師による適切な処置が必要です。
科学イベントや科学教室でネオジム磁石を使う実験や工作を行い、ネオジム磁石を持ち帰らせる場合は、ネオジム磁石についての注意を十分にしておくことが必要です。
※科学イベントなどでネオジム磁石を使った実験/工作をしていると、子どもに混じって私もやらせてもらったりしていたのですが、ネオジム磁石を「お持ち帰り」させるとき、ネオジム磁石についての十分な注意がなくて、「それでいいのかな~?」と思うのですが・・・
で、ネオジム磁石を使った実験/工作をする場合は、『ネオジム磁石についての注意』を説明して、注意書きを持ち帰らせています。また、単に注意するだけでなく、ネオジム磁石を安全に持ち帰らせるための対処もしています。その方法はこちら→ネオジム磁石を安全に持ち帰る方法 …これまた科学ネタなんですよ~(^^)
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2018/04/11 『フレミングの左手の法則』フリー画像…Fleming's left hand rule(free graphics) ←やっと、説明用画像を作りました。
2018/04/26 RikaTan 2018年6月号…観察・実験・ものづくり『ネオジム磁石はすごいゾ!』
※この記事の作成日は 2010/7/19
~.dion.ne.jp/~kagaku というサイトに載せていましたが、ホームページサービス(dion.ne.jp)が利用者減少のため2017/10/31で終了するので、ホームページのコンテンツをブログに移しました。
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