貝/ウニ/人間 近いのはどれとどれ?
東芝未来科学館で【リカタンず】貝殻の標本とタカラガイのストラップ作りの講師をして、貝殻のお話の中で↓こんなクイズを出してみました~
『貝/ウニ/人間 近いのはどれとどれ?』
あ~ここで「近い」というのは遺伝子で比べたときに近いってことです。
みなさんも考えてみてくさいね。
では、答えを出す前に… 子供たちに出したヒント/前振りの説明をします。
貝殻の標本を作って、貝のお話をした中で…
(⇒はスライド中の画像の出典です。)
⇒珍魚採集報告第64号 アオイガイ|東京都島しょ農林水産総合センター
⇒コウイカのエギング|海のルアー釣り入門サイト
⇒ビーチコーミング…三戸浜で【甲イカの甲/イカの骨】|あうるの森
貝は軟体動物(なんたいどうぶつ)
タコやイカも軟体動物
生物分類の門と綱では~
・巻き貝…軟体動物門・腹足綱
・二枚貝…軟体動物門・二枚貝綱
・タコ/イカ…軟体動物門・頭足綱
つまり、貝/タコ/イカはみな軟体動物門の生き物なのです。
タコやイカの祖先は殻を持っていました。現在でも殻をもつタコやイカがいます。アオイガイは殻をもつタコですし、コウイカの甲(イカの骨)は殻の名残です。
ウニは棘皮動物(きょくひどうぶつ)
・だから、ウニは貝ではありません。
・棘皮動物の特徴は 五放射相称(ごほうしゃそうしょう)
・ヒトデも棘皮動物
さっきと同様に門と綱では~
・ウニ…棘皮動物門・ウニ綱
・ヒトデ…棘皮動物門・ヒトデ綱
ということで、ウニやヒトデは棘皮動物門の生き物なのです。
ヒトデが五放射相称であることはパッと見て分かりますね。ウニ殻もちょっと観察して見れば、五放射相称です。ウニ殻を光に透かしてみると五放射相称がキレイです。
⇒生物の分類と系統|自宅で学ぶ高校生物
⇒2011年夏 佐渡博物館 企画展|魅力イッパイ! 佐渡の海の生きもの展 ~臨海実験所の資料から~ 展示パネル用に描いた系統樹です。
この「系統樹」のスライドで「地球上の生き物はみんな共通の先祖から進化によって枝分かれしてきたんだよ~」とお話し…
さて、ここでクイズです。
貝/ウニ/人間 近いのはどれとどれ?
答え分かったかな?
遺伝子的に近いのはウニと人間です!
なぜか?
系統樹で貝(軟体動物)とウニ(棘皮動物)がどこで枝分かれしたか見てみましょう。
そして、ウニ(棘皮動物)と人間(脊椎動物・哺乳類)がどこで枝分かれしたか見てみましょう。
ね。ウニ(棘皮動物)は貝(軟体動物)より人間(脊椎動物・哺乳類)に近いんです!
そして~
ウニの遺伝子の数はヒトとほとんど同じであり、しかも70%がヒトと共通している
…という衝撃の事実!この出典は⇒ヒトゲノム - Wikipedia です。
貝もウニも海の生き物で殻を持ってるし、人間と比べると下等な生き物だから、貝とウニが近いと思った人は多いでしょう。でもウニと人間の方が遺伝子的には近いんです。
ヒトゲノム - Wikipedia には次のような記述もありました…『下等生物と考えられていたウニの遺伝子の数がヒトとほとんど同じであり、しかも70%がヒトと共通していることなどが判明すると、人間が遺伝子の数で他の生物より優位にあるはずだという予想は、間違いであることが確定的となった。』
『人間が遺伝子の数で他の生物より優位にあるはずだという予想』は昔からの人々の価値観だと思うのですが、「進化論」を提唱したダーウィンはそんな考えは持っていませんでした。
『一つの動物が他の動物より高等だとするのは不合理である。』by ダーウィン
ダーウィンが『一つの動物が他の動物より高等だとするのは不合理である。』と言っているということは、
↓ この本
『系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史 (BERET SCIENCE)』を読んで知りました。この本、面白かった~(*゚o゚*)
ウニ(棘皮動物)がヒト(脊椎動物)に近く、貝(軟体動物)とは遠いと知ったのもこの本を読んで。そして、これをクイズにしたら意外性があって面白いかも(^o^)って、科学館でのお話のネタにしたのでした。
→2015/08/31 『系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史』 面白かった~
あ、それと上のスライドで『「進化」とは「優れたものになること」ではありません。多様化することです。』というのはこちらのページで⇒オシロイバナの花の色と遺伝: かかしさんの窓
こう書かれていました。引用させて頂きます…
『「進化」というのは「優れたものになること」ではありません。多様化することです。多様化して生態系上で新たな場所へ進出していくことです。現在地球上に生きているすべての生物は、すべて進化の最先端にいます。進んだ生物、遅れた生物のような考え方は間違っています。』←私はこの一文に感動してブログに書いてます。
2014/09/23 「進化」とは「優れたものになること」ではありません。多様化することです。
…ということで、貝やウニは「下等生物」ではありません。現在地球上に生きているすべての生物は、すべて進化の最先端にいるんです。
※関連記事
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