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2013年7月12日 (金)

「すっとびボール」はなぜ高く跳ね上がるのか?

「すっとびボール」の作り方 ←この作り方ですと小学生でも簡単に「すっとびボール」を作れます。作ったら飛ばします。みんな「すっとびボール」は初めてですから、「わぁ~!」と歓声をあげ、天井にぶつかるほど高く跳ね上がるとニッコリ(^o^)

で、ここで「なぜ?」って質問する子もいるけど、多くの子は遊んで終わり…
でもこれは科学実験ですから「なぜ高く飛び上がるのか?」を説明しません。まず観察します。←ここが重要!
「すっとびボール」の「なぜ?」は「教える」のではなく「発見」するお手伝いをしましょう。
私の場合、次の様にしてます…

「すっ飛びボールはなぜ高く跳ね上がるのか? ちょっとこれを見てね~」
竹串が付いたスーパーボールだけを落とす。
「スーパーボールだけだとこれだけ跳ね上がります。」
次はピンポン球だけを落とす。
「ピンポン球だけだとこれだけ跳ね上がります。」
「どちらも落とした高さより高く跳ね上がることはないね。」
「ところが、スーパーボールとピンポン球を重ねて落とすと~」
ピンポン球がポーンと高く跳ね上がる。
「今、みんなはピンポン球の方を見ていたよね?」
(※一般に動くものの方に注意が向くので、みんなピンポン球の方を見てしまいます。)
「もう一回やるから、今度はピンポン球は追わないで、スーパーボールの方を見ていてね~」
「はい、落としますよ。スーパーボールの方を見ていてくださいね。」
すっ飛びボールを落とす…
「どうだった?」
『スーパーボールはあんまり跳ね上がらなかった!』
ここで『アハッ!』と閃く子もいます。

※皆様も、上の動画をもう一度再生して、スーパーボールの方に注目して見てください。
 「アハッ!」ってなりましたか?

まだアハ体験に至っていないようなら、さらに説明…
「スーパーボールだけなら、これだけ跳ね上がったよね。
でも、スーパーボールの上にピンポン球があると、スーパーボールはこれしか跳ね上がらなかったね。
スーパーボールにはこれだけ跳ね上がるエネルギーがあるのに、ピンポン球が上にあるとこれだけ。じゃ、スーパーボールがここまで跳ね上がるエネルギーはどこに行っちゃったんだろう?」

…この様に進めると、たいていの子が、すっとびボールのピンポン球が高く跳ね上がる理由を「発見」してくれます。

この様に「すっ飛びボール」は科学的な「発見」の体験ができるアイテムですので、指導者の方は「なぜ?」を「教える」のではなく「発見」するお手伝いをするようにして下さいませ m(_ _)m

※教えない科学番組…
考えるカラス(NHK for School)…これは素晴らしい科学番組だ~!
考えるカラス」は『観察仮説を立て 実験考察する』番組です。
「すっとびボール」では特に「観察」することの大事さを体験できます。
物事を見るとき人は派手な方に目が行ってしまいます。「すっとびボール」の場合はピンポン球。でも、派手な方ばかりでなく、「全体をよく見る」ことで、目立たなかったスーパーボールの動きに気付き、そこに「なぜ?」を解き明かすヒントがあった~!
「物事の本質を見極めるには全体をよく見る必要があるんだよ~」という、非常に示唆に富んだ体験のできる科学実験アイテムです(^o^;

※科学イベントには小学生と一緒に親がついてきてます。ちょっと熱心そうな親には…「これが運動量保存の法則です。」と付け加えてます。すると「あ~アレ!」と高校物理を思い出すお父さん/お母さん(^o^)

もっと高く~
「すっとびボール」をもっと高く飛ばすには?
「もっと高いところからすっとびボールを落とす」←これは誰でも思いつきますね。
「もっと大きいスーパーボールにしたら、もっと高く飛び上がるんじゃない?」←いいアイディアですね~(^^)
「2倍の重さのスーパーボールにしたら、2倍高く飛び上がる?」←運動用保存の法則から推測するに、そうなることが期待されますが~、が、しかし!
…これ以上は書きません(^^; 実際に自分で実験してみましょう。そして、なぜそういう結果になるのか考えよう。←なかなかイイ自由研究ネタだと思いますよ(^^)

サッカーボールテニスボールで「すっ飛びボール」
「すっとびボール」はスーパーボールでやると決まったものではありません。弾むボールなら何でもいいんです。スーパーボールが下で、ピンポン球を上にしていたように、下に大きな(重い)ボール、上に小さな(軽い)ボールとすれば、すっ飛びます!
サッカーボールとテニスボールを重ねてやってみたことがありますが、腰の高さから落として、テニスボールは数メートル跳ね上がりました~!
注意:この実験は体育館のような場所で行ってください。部屋の中でやると、天井の照明を壊す危険もありますから。


「すっとびボール」で検索して… ※2023年現在、取り消し線を引いたリンクはリンク切れです。
[PDF]「すっとびボール」の研究史 がありました。こちらの資料によりますと…
・「すっとびボール」の命名は塚本栄世(神奈川県公立高校教諭)による。
・『このように「先行研究に言明する」という態度は,科学研究においてはあたりまえのことである。…(中略)…ところが,教材開発研究においては,こういったルールは必ずしも守られていないのではないように筆者は思うのだがどうだろうか。』

ん~同意。私も、このブログや科学体験クラブ府中のホームページに科学工作/実験アイテムの説明を書くとき、「先行研究に言明する」「参考文献/ページにリンクする」ってことを意識してやっていなかったな~(そもそも「研究」って意識じゃないし)
最近、サイエンスコミュニケーション活動を行う人が増えています。それは好ましい傾向だと思います。でもそれらの人々の多くは(私も含めて)研究者ではありませんし、「先行研究に言明するのはあたりまえ」ということが身に染みついている人々ではありません。
多くの人が、科学工作/実験「ネタ」をインターネットで探し出し、場合よってはそれを(勝手に)アレンジし、それをサイエンスコミュニケーション活動の中で使っていると思います。で、そのとき、その「ネタ出典」について、掲示/言及しているかというと~ はなはだ疑問です。
私も「先行研究に言明する」「参考文献/ページにリンクする」ってことを心がけたいと思います。


「塚本栄世」ってなんて読むの? 検索したらこちらの資料が出てきました…
平成2年度(第22回) | 東レ理科教育賞CSR・環境TORAY
[PDF]質量の異なる弾性体の連続衝突に関する実験教材の工夫 塚本栄世
…「つかもと えいせ 神奈川県立厚木高等学校 教諭」
あ~ 厚木高校の先生でしたか~!
そういえば厚木高校はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校になりましたね~
厚木高校 SSH
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは ←分かりやすい説明とはいえんな…
スーパーサイエンスハイスクール - Wikipedia ←「制度への批判」が興味深かった。


※2013/7/19追記

[PDF]「すっとびボール」の研究史 の「2. すっとびボールの理論」で、すっ飛びボールが跳ね返るときの方程式を立て、定量的な考察をしていましたので、私もそれを理解しようと…
すっとびボールの原理…最適質量比についての考察 をしてみました~
Jumpingballs41



※「すっとびボール」が高く跳ね上がる様子をYouTubeにアップロードしましたが、動画の投稿初心者なもので、こんな出来です(^^;; いや~「すっとびボール」の動画を撮るのは難しい~ 高く跳ね上がった様子を撮るにはカメラをもっと引かないと画面に入らないのですが、部屋の中で撮っているのでこれ以上引けない(部屋が狭いもので(^^;)
部屋が広かったとしても、あまり引くと、今度はピンポン球が小さくなっちゃう。
高く跳ね上がったピンポン球は画面の上に飛び出してますので、ピンポン球が落ちてくるまでの時間で「高く跳ね上がってるんだな~」とご推察ください(^^;

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