「すっとびボール」の原理…最適質量比についての考察
「すっとびボール」の作り方 を書いて、
「すっとびボール」はなぜ高く跳ね上がるのか? を書いたが、ここに書いた説明は、小学生にも分かるように…というのは表向きで、実は私が理解している事を書いただけ。まぁ私の頭はその位のレベルって事で(^^; 「運動量保存の法則」という名前だけ出しているが、運動量 p = mv という式は出てこないし、定量的な考察はしていない。小学生(&一般の人)向けなので、数式を使わず定性的に説明… というのは言い訳で、理解できるかちょっと?だったから(^^;
ん~でも、人に説明するのなら、定性的な説明をするにしても、バックグランドで定量的な理解をしておきたいものです。
高校物理の知識で理解できるはずだから。
そこで…
[PDF]「すっとびボール」の研究史 に次の式がありました。
↑リンク切れ ※2020/06/14時点では ↓こちらにありました。
⇒「すっとびボール」の研究史 - J-Stage ⇒ [PDFをダウンロード]
Mv0 - mv0 = MV + mv …①
v0 -(-v0) = -(V - v) …②
※ M,m 下と上のボールの質量
v0 跳ね返る直前の速度(上下のボールは同じ速度)
V,v 跳ね返った直後の下と上のボールの速度
①は跳ね返る前後の運動量の等式なのでこれは分かる。
でも②の等式の意味が分からない。
「すっとびボール 原理」で検索すると(2013年当時)トップに出てくるこちらのページ…
⇒すっとびボール suttobi.html に次の式が出てくる。
↑リンク切れ ※現在は ↓これかな?
⇒すっとびボール suttobi.html
(e0M - m)v0 = MV + mv …①’
e = -(V - v)/(e0v0 -(-v0)) …②’
①②に対し①’②’には反発係数 e0 e が入っている。
①②では反発係数=1の弾性衝突として扱っている。
だから、e0 = 1 とすれば、①と①’は同じ。
②と②’は見た目が違うが、e0 = e = 1 として分母を左辺に移項すれば、②と②’は同じ。
あ~!②’で②の意味が分かりました。これ反発係数の等式だったんですか~
さて、それでは[PDF]「すっとびボール」の研究史 の『①②の両式が成立する。これを解くと…』の部分を計算してみましょう。
②式より…
2v0 = -V + v
V = v - 2v0 これを①式に代入すると…
Mv0 - mv0 = M(v - 2v0) + mv
Mv0 - mv0 = Mv - 2Mv0 + mv
3Mv0 - mv0 = Mv + mv
(3M - m)v0 = (M + m)v
よって、
v = (3M - m)v0 / (M + m) …③
Vについても同様に解くと…
v = 2v0 + V
Mv0 - mv0 = MV + m(2v0 + V)
Mv0 - mv0 = MV + 2mv0 + mV
Mv0 - 3mv0 = MV + mV
(M - 3m)v0 = (M + m)V
V = (M - 3m)v0 / (M + m) …④
よって M = 3m のとき V = 0 ,v = 2v0 となり
『下のボールが上のボールの3倍の重さの時、下のボールは静止し、そのとき上のボールは落下速度の2倍の早さで跳ね上がる。つまり4倍の高さまで跳ね上がる』ということになるのか~!なるほど~
あ、この結論は④式だけを解釈してますよね~
③式を解釈すると…
m = 3M のとき、v = 0 , V = -8Mv0/4M = -2v0
上のボールは静止し(跳ね返らない)!下のボールは床にめり込む? そんなことないよね~(^^;
③式はどう解釈すればいいのでしょう??
すっとびボールの原理を検索していると、「下のボールが上のボールの3倍の重さの時が最適」みたいなことが書かれている。これは④式の解釈のようです。でも、この3倍という(ガンダムのシャアみたいな)数字はほんとに「最適」?
私は、すっとびボールは運動量保存の法則で説明されるのだろうから、単純に上下の質量比が大きいほど高く跳ね上がると思っていたのですが… だから、上下の質量比の大きいピンポン球とスーパーボールを使っています。
お、そうだ、実際に重さを計って③式で計算してみましょう。
m:ピンポン球 2.6g ※規格では2.7gですが、穴を開けてるので2.6gでした。
M:スーパーボール(φ32mm) 14g
M ≒ 5.4m ←この m はメートルではなく、上のボールの質量です。
③式 v = (3M - m)v0 / (M + m) = (3*5.4m - m)v0 / (5.4m + m) ≒ 2.4v0
④式 V = (M - 3m)v0 / (M + m) = (5.4m - 3m)v0 / (5.4m + m) ≒ 0.38v0
M = 3m の場合は v = 2v0 でしたが、
ピンポン球とスーパーボールで M ≒ 5.4m の場合は v = 2.4v0 となり、
質量比3倍の場合より高く跳ね上がりますよ~!
すっとびボールで「最適化」したいのは飛び上がる高さですよね~
すっとびボール suttobi.html には次の記述がありました。
『m<<Mならばv=3v0となって9培の高さまで跳ね上がることになります。』
あ~!そうですよ。③式 v = (3M - m)v0 / (M + m) の解釈は↑これですよ!
「m≪Mなら」←これは「m(上のボール)がM(下のボール)に比べて十分に軽い」と読みます。すると、v = 3v0 となります。※M=10m、M=100mとかで計算してみれば、比が大きくなるほど v = 3v0 に近づくことが分かると思います。
私の結論…「すっとびボールの最適質量比3倍」というのは「最適=一番高く跳ね上がる」という意味ではなく、下のボールの運動量を全て上のボールに渡しているという意味で「最適」である。一般の人が期待する「すっとびボールの最適」の意味は「最適=一番高く跳ね上がる」であろうから、そのためには上下のボールの質量比を大きくすれば良い。③式より跳ね上がる高さの上限は9倍である。一方、質量比3倍の時の場合の跳ね上がる高さは4倍である。
※ところで、上下のボールの質量比を大きくしたら、もっと高く飛び跳ねるかな~?と、やってみました~(^^) 右から2番目がいつものスーパーボール
これだけ大きいスーパーボールなら高~く跳ね上がるよね!
しかし…勝手に期待していたほど高くは跳ね上がりません(^^;
ん~なぜでしょう?
上のボールが跳ね上がる高さは③式により、質量比によって変わりますから、それをグラフにしてみればいいんだ!
Excelでグラフにしてみました~
※Excelでグラフ作成なんて久しぶりなもんで、やり方をWebで検索しながら…(^^;
グラフを見て、あ~!なるほど~
質量比が10を超えたあたりから、それ以上に質量比を大きくしても反発速度(v)はたいして大きくなりませんね。上限の3にじわじわと近づいていくだけ。
私が使ったピンポン球とスーパーボール(φ32mm)の質量比は5.4で、たまたま良く跳ねる質量比だったようです(^o^)
※上のグラフを作って、眺めていたら…
・これに速度Vの方もプロットしたら、どうなってるんだろう?
・質量比1未満の場合はどうなっているんだろう?
…と、色々興味が湧いてきてしまったのですが、ここまで書くだけでも既に何時間も費やしてしまったので、今日はここでおしまいです。そのうち・・・
あ~とっても気になるので、まずは…
・これに速度Vの方もプロットしたら、どうなってるんだろう?
↓こうなりました。
これ、おかしいですよね~!
下のボールだって跳ね返るんだから、速度Vがマイナスになるなんてあり得ない。
質量比1の場合、上下のボールは一体と見なせますから、v=1v0,V=1v0 になるハズ。
↓こうなるんじゃないかと思うんですけど~
④式には制約条件が付くんだけど、そのことが考慮されていないということかな?
ん~
・質量比1未満の場合はどうなっているんだろう? こっちも気になる~
質量比 0.025~1まで、0.025間隔で ③式、④式をそのまま計算したら…
↓こうなった
上のボールの反発速度(v)は、3M=m(質量比 0.33…)のところで 0 となり、それより小さい質量比ではマイナスになってしまう~!
先ほど、下のボールの反発速度(V)が、M=3m(質量比 3)のところで 0 となり、それより小さい質量比でマイナスになってしまうのを、計算結果の絶対値をとって(計算式に abs( )を付けて)回避したのと同じ事をすると、こうなる↓
下のボール(V)の方が上のボール(v)より早い(汗・汗)そんなこと物理的にあり得な~い。
質量比3より小さい場合のすっとびボールの謎は深まるばかりであった・・・
※ 2019/09/16にWikipediaに「すっとびボール」のページが追加されていたんですね~
※2023/10/17 YouTubeで見つけた👇おもしろい!
スーパーボール何個重ねて落とせば宇宙まで跳ね返るのか?【物理エンジン】
物理エンジンを使うと、こんな実験ができるのか~😃
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