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2017年9月30日 (土)

正多面体はなぜ5種類しかないのか? 実験

正多面体は5種類しかありません。
なぜ5種類しかないのか?それを「実験」で確かめましょう(^^)/~

Regularpolyhedra

※正多面体が5種類しかないことの「証明」は、普通は数学的に「整数不等式」を使って行いますが、まだ数学を学んでいない小学生や、もう数学は忘れてしまった大人のために…「実験」で確かめるのが一番納得できる方法だと思いますので、興味のある方は試してみてくださいな。
この記事の最後でオイラーの多面体公式による証明も載せてます。


用意するもの
Polygons_pdf 正多面体はなぜ5種類しかないのか?実験用 正多角形セット…こちらのPDFを開いて、ちょっと厚めのA4の紙に印刷します。この用紙から、正三角形:6枚,正方形:4枚,正五角形:4枚,正六角形:3枚を切り出して使います。
Polygons

Whyonly5polyhedra_pdf 正多面体はなぜ5種類しかないのか?調査用紙…こちらは普通紙に印刷します。
ハサミ または カッター,定規,カッティングマット:正多角形セットを切るのに使います。
セロテープ:正多角形を並べて貼るのに使います。


やってみよう~

Pp33 Pp33p Pp33q
正三角形を3枚並べてセロテープで貼ります。それを三角錐の形にすると、多面体の頂点ができます。これで作れるのが正4面体

そこで「調査用紙」の「正三角形/3枚」の欄に○を書きます。
正三角形が2枚では立体が作れないことは分かりますよね。「正三角形/2枚」の欄に×を書きます。
Whyonly5polyhedra_answering
このように正多角形何枚で多面体の頂点が作れるかどうかを調べていきます。
次は…

Pp34 Pp34p Pp34q
正三角形/4枚では… 頂点が作れます。これで作れるのが正8面体

Pp35 Pp35p Pp35q
正三角形/5枚でも… 頂点が作れます。これで作れるのが正20面体

Pp36
正三角形/6枚では… 平らになってしまうので、頂点は作れません。
6枚でダメだから、7枚以上でもダメですね。

Pp43 Pp43p Pp43q
正方形/3枚では… 頂点が作れます。これで作れるのが正6面体(立方体)

Pp44
正方形/4枚では… 平らになってしまうので、頂点は作れません。
4枚でダメだから、5枚以上でもダメですね。

Pp53 Pp53p Pp53q
正五角形/3枚では… 頂点が作れます。これで作れるのが正12面体

Pp54
正五角形/4枚では… 4枚並べられないので、頂点は作れません。
4枚でダメだから、5枚以上でもダメですね。

Pp63
正六角形/3枚では… 平らになってしまうので、頂点は作れません。
つまり正六角形では正多面体は作れません。
正七角形以上でも正多面体は作れませんね。

…さて、調査用紙の結果を見てみましょう。
Whyonly5polyhedra_answer
○の数は5つ。だから、正多面体は5種類しかないんです(^_^)v


「整数不等式」を使っての証明
数学を忘れかけている(私も含めた)大人のために、参考までに「整数不等式」を使っての証明を示します。
ちょっと復習しておこうかな…という方、どうぞ↓

正多面体の各面を正 p 角形、正多面体の頂点に集まる面の数を q とする。
一般にp角形の内角の和は、(p - 2)×180°である。
Polygontrianglediv
p角形の一つの頂点と各辺を結んで、p角形内に (p - 2)個の三角形ができるから)
三角形の内角の和は180°なので、
p角形の内角の和は、(p - 2)×180°となり、
p角形の各頂点の内角は (p - 2)×180°/p となる。

正多面体の一つの頂点には q個の正p角形が集まるので、
このq個分の角の和は ((p - 2)×180°/p)× q
これは360°より小さいはずである。
(360°では平面になって、立体にならないから)
よって、以下の不等式が成り立つ
 ((p - 2)×180°/p)× q < 360°
この不等式を整理すると
 (p - 2)(q - 2) < 4 となる。

この不等式を満たす整数 pq の組み合わせは、以下の5種類のみである。
(3, 3) … 正4面体
(3, 4) … 正8面体
(3, 5) … 正20面体
(4, 3) … 正6面体
(5, 3) … 正12面体

…いかがでしょう?
正多角形を切った貼ったする「実験による証明」より、 整数不等式を使った「数学的証明」の方が「エレガント」だと思います?
小学生や(数学に縁遠い)一般の人が「納得できる」のは「実験による証明」だと思うのですが…
「数学的証明」の方は素直に納得できませんよね。それは、この証明の中に「そんなこと分かってるでしょ~。そこは自分で考えなさいよ~」と、説明をはっしょっている箇所が3つもあるからです。その3つは…

・三角形の内角の和は180°なので、
・この不等式を整理すると (p - 2)(q - 2) < 4 となる。
・この不等式を満たす整数 pq の組み合わせは、以下の5種類のみである。

…これら3点を以下説明します。
三角形の内角の和は180°なので、
これは「幾何学を勉強したなら、そんなこと常識よ~」ってことで、説明省略(^^;
まぁ、せっかくなので図だけ載せときますね。
Triangle180

この不等式を整理すると (p - 2)(q - 2) < 4 となる
これは「そこは自分で計算しなさいよ~」って部分。私も計算してみた…

((p - 2)×180°/p)× q < 360° 両辺を180°で割る
((p - 2)/p)× q < 2 両辺に p を掛ける
(p - 2)q < 2p (×は省略)左辺を展開
pq - 2q < 2p 右辺を左辺に移項(両辺から 2p を引く)
pq - 2q - 2p < 0 左辺を因数分解できるように、両辺に4を加える
pq - 2q - 2p + 4 < 4 左辺を因数分解
(p - 2)(q - 2) < 4

…書き出してみると、数学に縁遠い人には簡単じゃないよね(^^;

この不等式を満たす整数 p とq の組み合わせは、以下の5種類のみである。
pの値が 1,2,3,4,5,6,…のとき、
qの値がいくつだったら不等式が成り立つかを一つずつ調べていく…
pは正p角形の値なので p ≧ 3 である。pの値が 1 と 2 の場合は対象外。図形で考えれば、正1角形とか正2角形はありえない。
pの値が 3 (正三角形)の場合は、qの値が 3 と 4 と 5 で不等式が成り立つ。
pの値が 4 (正方形)の場合は、qの値が 3 で不等式が成り立つ。
pの値が 5 (正五角形)の場合は、qの値が 3 で不等式が成り立つ。
pの値が 6 以上の場合は、(p - 2)の値が 4 以上になり、不等式は成り立たない。

あれ、あれ~! これって「実験による証明」でやったことと同じじゃありませんか~!
「実験による証明」では、正多角形を描いて、切って、貼って…という手間がかかりましたが、
「数学的証明」では、(p - 2)(q - 2) < 4 という整数不等式を導き出す/理解するのに手間がかかり…(^^;
どっちが簡単?っていうと、数学の基礎を勉強していなくてもできる「実験による証明」の方が簡単?
いえ、いえ、そんなことはありませんよ!
「実験による証明」の方では、数学的に難しい部分を既にこちらで用意済みだったのです。
「実験による証明」を自分で一からやるには、まず正三角形、正方形、正五角形、正六角形を描く必要があります。
正五角形をどうやって描きます? それにはやっぱり数学/幾何学を勉強していないといけないのです。


正多面体が5種類あることは石器時代の人も知っていた
「正多面体」で検索すると「プラトンの立体」って言葉が出てきますが、プラトンさんが正多面体を見つけたわけでも、5種類しかないことを証明したわけでもありません。(詳細は自分で調べてね。)
そんなことより、「正多面体」で検索していて見つけたこのページ↓
Neolithic Carved Stone Polyhedra(新石器時代の多面体の石玉)
お~すごい!新石器時代に5種類の正多面体に相当する石の玉を作っていたんですよ~!!
5種類しかないことを証明はしてないでしょうが、5種類あることは知っていたんですよ~

あ、上で紹介したページは英語のページで、「正多面体」で検索して出てくるわけないですね。
「正多面体」で検索して見つけたページはこちら→「新石器時代の多面体
このページの中に『スコットランドでの「手作業による発見」が, ギリシャでの「数学的研究」をはるかに先行しているが…』という記述がある。ん、ん、「手作業による発見」いい言葉ですね~(^_^)

このページでやっている「実験による証明」は、2008/01/26に府中グリーンプラザで、
ふしぎ発見科学教室「正多面体ペーパークラフト~正多面体はなぜ5種類しかないのか?実験」をやったときの内容ですが、そのときの狙いは「手作業による発見」みたいなこと。
自分で手を動かして、自分で何かを発見する。という体験は長く記憶に残りますからね(^_^)v

正多面体が5つ存在し、5つしか存在しないことを証明したのは、古代ギリシャの数学者テアイテトスだそうです。
正多面体が5種類だけであることを証明したのはテアイテトス

※この記事の作成日は 2012/03/25
~.dion.ne.jp/~kagaku というサイトに載せていましたが、ホームページサービス(dion.ne.jp)が利用者減少のため2017/10/31で終了するので、ホームページのコンテンツをブログに移しました。



※関連記事
2012/03/25 正多面体はなぜ5種類しかないのか?
2012/04/04 正多面体が5種類あることは石器時代の人も知っていた
2017/03/17 RikaTan 2017年4月号…ニセ科学を斬る!2017 ←「正多面体はなぜ5種類しかないのか?」を説明するとき、オイラーの多面体定理(オイラーの多面体公式)を使って説明するのって「権威を押し付けている」んじゃね?と思うところがあって、特集『ニセ科学を斬る』の回の連載を『正多面体はなぜ5種類しかないのか?実験』にしました。

この記事を書いたときに編集メーリングリストに投げだメモ…
この記事でお伝えしようとしていることは、
科学イベントなどで「正多面体はここにある5種類しかありません。」というお話をして「え!ほんとに?」という反応をした人に、3分間で「納得できる」説明をする方法です。
説明する相手は小学生とその親です。
数学を学んでいない小学生、または、かつて数学勉強したけど大人になってから一度も「因数分解」なんてする必要に迫られたことないから…数学を忘れてしまった大人に対して、いかに説明するか?

サイエンスコミュニケーションしていて相手が「なぜ?」と反応したときは、それを伝える絶好のチャンスです。
そして、その答えは3分以内でが経験則。
30分かけて数学的な証明を説明することはできません。相手は学校に来ている学生ではないから。
イベントを「楽しむ」ために来ている人たちですが、科学イベントなので「知的好奇心」があって来ています。
そういう人が「なせ?」と思ったときに、相手が「納得できる」説明ができると、「アハ!」となって(たぶん脳内ではドーパミンが分泌されて)「楽しかったね~」という記憶と共に「科学のタネ」が植えつけられます。
「なぜ?」から3分以内に「アハ!」体験に結びつける。←ここが重要です。
私は子供に分かりやすく説明すると同時に親に対しても語りかけています。
子どもと一緒に科学イベントに来た親が、アハ!体験から「科学って楽しい~」と思ってくれれば、その後で自分の子供に対してより科学に親しむようなアクションをしてくれること期待できますよね。

私が「オイラーの多面体公式」を使って正多面体が5種類しかないことを説明しないのは、こういった背景・経験によるものです。
例えば、オイラーの多面体公式を使っての証明をざっくり書くと次のようになります。

オイラーの多面体公式」を使っての証明

オイラーの多面体公式 V - E + F = 2 (V:頂点数、E:辺の数、F:面の数)
F個の正p角形の辺の数は pF、1つの辺は2つの面に属するので pF=2E ⇒ F=2E/p
V個の頂点に q本の辺が集まり、1つの辺は2つの頂点を結ぶので、qV=2E ⇒ V=2E/q
これらを V - E + F = 2 に代入して E のみの式にすると
2E/q - E + 2E/p = 2
両辺を E で割ると
2/q - 1 + 2/p = 2/E
右辺は正なので左辺も正
2/q - 1 + 2/p > 0
この不等式を整理すると
(p - 2)(q - 2) < 4 となる。

この分量ならA4の紙1枚に書いておけます。
でも、これを1行1行相手に納得してもらいながら、3分で説明することはできるでしょうか?
説明する前に「説明は結構です」と断られる可能性大ですね。
数式見ただけで拒絶反応という人が結構いますから。

私がこの説明を受けたら、次の質問をしますね。
なんで「この不等式を整理すると (p - 2)(q - 2) < 4 となる」のですか?
それは~

2/q - 1 + 2/p > 0
ちょいと移行して、
2/q + 2/p > 1
両辺にpqを掛けて
2p + 2q > pq
またちょいと移項して
pq -2p -2q < 0
両辺に4を加えて
pq -2p -2q + 4 < 4
左辺を因数分解して
(p - 2)(q - 2) < 4 となる。

この計算の最後に「因数分解」します。
因数分解で数学苦手になった人 多いようなので、人によっては「数学苦手」のトラウマを引き出してしまうかもしれません。
せっかく「なぜ?」と興味を持ってくれたのに、興味が一気にしぼみ「なんだか分からなかった…」という残念な結果になりかねません。
よしんば因数分解をクリアできたとしても、次に「なぜ V-E+F=2 が成り立つのですか?」というラスボスが立ちはだかっています。

私が目指すところは、多くの人に納得してもらえる説明をし、アハ!体験で「科学って楽しい~」という記憶を植え付けることです。
説明が難しいことでも、それを分かりやすく説明する努力は怠りませんが、現実的に無理なら説明はしません。代わりに「きっかけ」を与えられればそれでいいと思っています。

※さらに関連記事
2016/02/19 世界で二番目に美しい数式 V-E+F=2

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